庄内の春は「孟宗汁」から|酒粕でコクを出す郷土の味の作り方【東北・山形の農家が解説】

孟宗汁の椀と孟宗竹、酒粕、桜の花。タイトル「庄内の春は孟宗汁から」と「酒粕でコクを出す郷土の味の作り方」 孟宗竹
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残雪の鳥海山。庄内では雪解けの時期に孟宗竹のシーズンが始まる

4月下旬、田んぼから鳥海山を見上げると、まだ山頂に雪が残っています。山に「種まき爺さん」の雪形が見え始める頃、ご近所や親戚から掘りたての孟宗竹(もうそうだけ)が次々と届きます。それを酒粕と味噌で仕立てた「孟宗汁(もうそうじる)」が、庄内の春の食卓には欠かせません。

この記事では、毎日朝昼晩のように食べ続けても飽きない、この時期にしか食べられない庄内流・酒粕入り孟宗汁の作り方と、鮮度の見分け方をまとめます。

この記事で分かること

  • 鳥海山と「種まき爺さん」、庄内に春を告げる孟宗の季節
  • 孟宗竹(もうそうだけ)の見分け方と、なぜ庄内で愛されるのか
  • 孟宗の鮮度を見るコツ(赤い粒々の色が教えてくれる)
  • 酒粕と味噌の選び方|地元の銘柄が香りを決める
  • 食べきれないときの保存・アレンジ(炊き込みご飯・天ぷら)

鳥海山の残雪が合図|庄内の春は孟宗汁から始まる

庄内平野では、田んぼの作業の合間に鳥海山を見上げる癖がつきます。山の雪の残り方で、季節の進み具合を読むからです。

4月下旬、山頂のあたりに白が残り、中腹の雪が落ち着いてくると「種まき爺さん」と呼ばれる雪形が見え始めます。種まきの目安として昔から地元で使われてきた目印で、この姿が見えると孟宗竹のシーズンも本格化します。

稲作と家庭菜園の準備に追われる4月後半から5月にかけて、孟宗竹の季節が訪れます。

孟宗竹とは|どこから来て、なぜ庄内で愛されるのか

掘りたての孟宗竹3本。皮の紫から黄色のグラデーションが美しい

写真:いただきものの孟宗竹。皮の紫〜黄色のグラデーションが新鮮さの証

孟宗竹(もうそうだけ、学名 Phyllostachys edulis)は中国・江南地方が原産の竹で、江戸時代に薩摩藩経由で日本に伝わったとされます。タケノコの中では最も大型で、皮には茶〜紫の毛と斑が入っているのが見分けポイントです。

地元の庄内では「もうそうだけ」と呼ぶのが一般的です。辞書には「もうそうちく」「もうそうだけ」の両方の読みが載っており、「ちく」は漢字の音読み、「だけ」は和語の訓読み。家庭の食卓では昔から訓読みの「だけ」の方が親しまれてきました。

庄内地域では4月下旬から5月中旬が孟宗竹の旬。スーパーにも多く並びますが、我が家では、ご近所から掘りたてをいただけるので、店で買うことなく、ほとんどがいただきもので食卓に上がります。

1日だけで10本以上もいただくこともあり、当然我が家だけでは食べきれないので、他の知り合いにおすそ分けして回します。庄内の春は孟宗竹がご近所のあいだをぐるぐる回る季節でもあります。

掘りたての孟宗は、根に近い白い部分が驚くほど甘くて柔らかい。スーパーで売っている水煮タケノコとは別物です。この味に出会えるのは、地元暮らしの大きな役得だと感じています。

孟宗の鮮度を見るコツ|赤い粒々の色がポイント

皮を剥いた孟宗竹の断面。節の部分に赤い粒々が並ぶ

写真:節の境目に並ぶ赤い粒々が、新鮮な掘りたて孟宗のサイン
粒々の色は鮮度の目安になります。掘りたてに近いほど鮮やかな赤色で、時間が経つにつれて紫色 → 黒色へと変化していきます。収穫から日数が経っているものは、アクも強くなっています。この粒々は、孟宗がそのまま竹に育っていったときに根になる部分(根の原基)で、病気ではなく成長点の名残です。色の正体は孟宗自身が持つアントシアニン系の天然色素。粒の部分は硬くて口に残るので、汁物や煮物に使うときは皮を剥くタイミングで一緒に削ぎ落とすのが下処理のポイントです。

酒粕と味噌の選び方|地元の銘柄が香りを決める

酒粕は地元の蔵元のものを使うと香りが違う

孟宗汁の味の8割は酒粕で決まると言っても言い過ぎではありません。地元・庄内や新潟の蔵元の酒粕は香りが上品で、孟宗の風味と喧嘩しません。スーパーで買えるものでも十分作れますが、できれば蔵元名の入った板粕やバラ粕を使ってみてください。

味噌は控えめにして酒粕の風味を活かす

普段の味噌汁感覚で味噌をしっかり入れると、せっかくの酒粕の香りが消えてしまいます。味噌は普段の半量〜2/3を目安にして、足りない塩味はしょうゆや塩で微調整するのが庄内流です。

味噌そのものも、できれば庄内産の天然醸造の合わせ味噌や麦味噌を選ぶと、酒粕とのバランスが良くなります。

食べきれないときの保存・アレンジ

翌日の方が味が馴染む

孟宗汁は翌日以降の方が味が深まります。酒粕と味噌の風味が孟宗にしっかり染み込み、温め直すたびにおいしくなる珍しい汁物です。冷蔵で2〜3日、毎日温め直しても問題ありません。

下処理した孟宗の使い回し

  • 炊き込みご飯:薄く味付けしただし汁で米と一緒に炊くと、春らしい一品になります
  • 天ぷら:穂先の柔らかい部分を縦割りにして揚げると、サクッとした食感が楽しめます
  • 木の芽和え:味噌・木の芽・砂糖少々で和えるだけで、料理屋のような前菜に
  • 冷凍保存:薄切りにして1食分ずつラップ→冷凍。1ヶ月は風味が持ちます

春の庄内、家族で囲む孟宗汁

田んぼの準備、家庭菜園の植え付けと、4月から5月の庄内は本当に忙しい時期です。そんな中、食卓に孟宗汁が並ぶと、「おう!今年も孟宗汁だ!」と疲れが飛び、一息つけます。

掘ってきてくれるご近所、おすそ分けで広がる輪、家で煮る酒粕の香り。孟宗汁は単なる料理ではなく、庄内の春そのものです。

失敗しないための4つのコツ

  1. 下処理:いただいたその日にぬかでゆで、火を止めて自然に冷ます
  2. 切り方:いちょう切りか半月切りで繊維を断ち、味を染ませる
  3. 酒粕:少量のだしで溶いてから入れる。50gから始めて調整
  4. 味噌:普段の半量〜2/3に抑え、酒粕の風味を主役にする
孟宗汁レシピのまとめ図

図:孟宗汁レシピと下処理の早見表(保存・印刷推奨)

このレシピがどなたかの食卓に届いて、孟宗汁の輪がまた少し広がれば嬉しいです。掘りたての孟宗をいただく機会があれば、ぜひ酒粕を効かせた庄内流で作ってみてください。

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