7月初旬に、田んぼで溝切り(水はけをよくするため田面に溝を掘る作業)をしていたとき、突然めまいと吐き気に襲われたことがあります。
急いで冷水シャワーを浴びましたが、その後はひどい寒気に襲われ、布団にくるまって震えていました。
今思い出しても、あのときのことは本当にぞっとします。暑さを甘く見てはいけないと痛感した出来事でした。
熱中症は真昼だけのものではありません。朝の涼しいうちに始めたはずの作業でも、夢中になるうちに日が高くなり、そのまま倒れる事故が毎年起きています。
この記事では、山形・庄内で米と野菜を作っている筆者が、畑仕事で実際に使っている暑さ対策グッズと、今年から導入を検討しているものを分けて紹介します。
この記事で分かること
- 50代からの畑作業で熱中症のリスクが上がる理由
- 「冷やす・気づく・補給する」でそろえる対策グッズ5選
- グッズに頼らない、作業時間と休憩の考え方
農作業の熱中症は「気づいたときには進んでいる」
農林水産省のまとめでは、令和6年の夏(5〜9月)に田畑などでの農作業中に熱中症で救急搬送された人は、全国で2,322人と直近5年で最も多くなりました。亡くなる事故は7〜8月に集中し、大多数を70代以上が占めています。家庭菜園の中心世代が、そのまま危険の中心世代です。
理由は体の変化にあります。年齢を重ねると暑さやのどの渇きを感じにくくなり、体にたくわえられる水分も若い頃より少なくなります。「まだ大丈夫」という感覚そのものが、あてにならなくなるのです。
実際に、朝から水田の畦畔(けいはん)の草刈りをしていた70代の男性が、正午頃に意識不明で見つかった事故も報告されています。朝に始めたから安全、とは言えません。
こんな症状が出たら、すぐ作業を中断してください。
- めまい・立ちくらみ・足がつる(こむら返り)
- 頭痛・吐き気・体のだるさ
- 汗が異常に多い、または急に汗が止まる
日陰で体を冷やし、水分と塩分を補給します。呼びかけへの反応がおかしい、自力で水が飲めないときは、ためらわず119番へ。救急車を待つ間は、首・わきの下・足の付け根を冷やします。
暑さ対策グッズ早見表
これから紹介するグッズを役割ごとにまとめました。「冷やす」「気づく」「補給する」の3本柱で考えると、そろえるものがはっきりします。グッズ名を押すと、それぞれの詳しい紹介へ移動します。
| グッズ | 役割 | こんな人に | 価格帯の目安 |
|---|---|---|---|
| ファン付きベスト | 服の中に風を通して冷やす | 日中も作業せざるを得ない人 | 8,000〜15,000円 |
| つば広の帽子 | 頭と首筋を日差しから守る | まず基本を押さえたい人 | 1,500〜3,000円 |
| ネッククーラー | 首元を直接冷やす | 首回りの暑さがつらい人 | 1,000〜3,000円 |
| 黒球式熱中症指数計 | 危険な暑さを数値と音で知らせる | 暑さを感じにくくなってきた人 | 3,000〜5,000円 |
| 経口補水液 | 脱水時に水分と塩分を素早く補う | 万一への備えを置いておきたい人 | 1袋200円台 |
① 体を「冷やす」グッズ
体温を上げないことが、熱中症対策の土台です。着るもの・かぶるものは毎回の作業で必ず使うだけに、効果も積み重なります。
ファン付きベスト|服の中に風の通り道を作る
筆者がいちばん頼りにしているのが、Norauiのファン付きベスト(バッテリー・ファンのセット品)です。腰の2つのファンが外気を取り込み、服の中を風が通り抜けて汗を乾かしてくれます。風量は3段階で調節でき、バッテリーが大容量なので、朝からの作業でも電池切れの心配がほとんどありません。
買う前は「おおげさではないか」と思っていましたが、夏の草刈りで使ってみると、作業後の疲れの残り方が明らかに違いました。今では夏の畑仕事の必需品です。
注意点もあります。気温が体温に近づくような猛暑日は、送風だけでは冷えにくくなります。そうした日は、次に紹介するネッククーラーなどの併用や、そもそも作業を休む判断が必要です。
つば広の帽子|頭と首筋を日陰にする
帽子は麦わら帽子でも十分ですが、筆者はFREESEのサファリハットを使っています。つばが広く、頭のてっぺんだけでなく首筋まで日陰に入るのが利点です。メッシュ素材で蒸れにくく、吸湿速乾で汗をかいても乾きが早く、とても軽いので長時間かぶっても苦になりません。
折りたたんで持ち運べるので、作業かごや車に入れておいてもかさばりません。日よけと蒸れにくさを両立したい人に向いています。
ネッククーラー|首の血管を直接冷やす
こちらは筆者もまだ使っておらず、今年から導入を検討しているグッズです。いくつか比較した結果、電池も水も使わないPCM素材(24℃以下で自然に凍るタイプ)の首掛けリングが畑向きだと考えています。冷蔵庫や氷水のほか、24℃以下の涼しい部屋でも自然に凍り、保冷剤と違って結露しにくいのでシャツが濡れません。
首には太い血管が通っているため、首元を冷やすと効率よく体温の上昇を抑えられるとされています。ファン付きベストと役割が重ならないのも、選んだ理由です。
② 危険に「気づく」ためのグッズ
暑さを感じにくくなる年代こそ、感覚ではなく数値で危険を知る仕組みが役に立ちます。
黒球式の熱中症指数計|体感に頼らず危険を知る
環境省は熱中症の危険度を「暑さ指数(WBGT)」で示しています。28を超えると熱中症の患者が急に増え、31以上は「危険」とされ、高齢者は安静にしていても発症するおそれがあるレベルです。
この暑さ指数を畑で測れるのが、タニタの黒球式熱中症指数計 TT-562GDです。黒球式は気温と湿度に加えて、日差しや地面の照り返しまで含めて測る方式で、屋外の作業環境に向いています。危険なレベルになるとアラームで知らせてくれるので、「まだ大丈夫」という思い込みを止める保険になります。筆者も今年から導入を検討しています。
③ 水分と塩分を「補給する」グッズ
ふだんの作業なら、麦茶と塩飴で十分です。筆者も水筒の麦茶と塩飴を持って畑に出ています。大事なのは、のどが渇く前に、時間で区切って飲むことです。
経口補水液|「おかしい」と感じたときの備え
大量に汗をかいたときや、めまい・だるさなどのサインが出たときは、水やお茶よりも経口補水液(OS-1など)が頼りになります。水分と塩分を素早く吸収できる組成になっており、脱水への備えとして定番です。
紹介するのは持ち運びやすいゼリータイプ(200g×6袋)です。めまいなどで食欲が落ちているときでも口にしやすく、キャップ付きで少しずつ補給できます。夏の間だけでも家に常備しておくと、いざというとき慌てません。飲まずにシーズンが終われば、それがいちばん良い夏だったということです。
グッズより先に見直したい、作業のしかた
グッズはあくまで補助です。作業のしかたそのものを暑さに合わせることが、いちばんの熱中症対策になります。
- 11時〜14時は畑に出ない:作業は朝と夕方に寄せます
- 朝でも時間を区切る:梅雨明け後は朝から気温も湿度も高い日があります。「◯時まで」と決めて、スマホのタイマーをかけます
- 30分〜1時間に1回は日陰で休む:休憩のたびに、麦茶を一口ではなくコップ1杯
- ひとりで畑に行くときは家族に伝える:場所と戻る時間を言っておくだけで、万一のときの発見が早くなります
- 寝不足・朝食抜きの日は無理をしない:体調が整っていない日は発症しやすくなります
よくある失敗パターン
- のどが渇いてから飲む:渇きを感じたときには脱水が始まっています。時間で区切って飲みます
- 「朝だから大丈夫」と昼まで続ける:朝始めた草刈りで正午に倒れた事故が実際に起きています
- 麦茶だけをがぶ飲みする:大量に汗をかいたときは塩分も一緒に補わないと、体の塩分が薄まってしまいます
- ファン付きベストの充電を忘れる:前日の夜に充電する習慣にします
- 不調を「年のせい」で片付ける:めまいやだるさは熱中症の入り口かもしれません。まず日陰で休みます
まとめ
畑の熱中症対策 3本柱
- 冷やす:ファン付きベスト・つば広の帽子・ネッククーラー
- 気づく:黒球式の熱中症指数計で、危険を数値と音で知る
- 補給する:麦茶+塩飴を時間で区切って。備えに経口補水液
畑の作業は、多少延びても待ってくれるものがほとんどです。しかし体は、一度倒れると取り返しがつきません。「今日は無理をしない」と決めることも、長く家庭菜園を続けるための大事な備えです。
出典・参考:農林水産省「農作業死亡事故調査」「農作業中の熱中症対策」/環境省 熱中症予防情報サイト/総務省消防庁「熱中症による救急搬送状況」
なお、当ブログでは、実際に家庭菜園を続ける中で新しい気づきがあれば、公開済みの記事も随時加筆・更新しています。
そのときどきの畑の様子や試した結果も少しずつ書き加えていきますので、また見に来ていただけたら幸いです。

